2025年9月13日、佐伯広域森林組合の今山哲也さんをお招きし、第3回ひた森講演会「伝統の日田と新進気鋭の佐伯。森を育てる工夫と未来」を開催しました。
日本各地で伐採後の再造林率の低下や担い手不足といった課題が表出する中、全国に約600ある森林組合の中でも注目を集める佐伯の取り組みと、500年の伝統を誇る日田林業が知見を交えることで、未来へのヒントを探ります。
伝統の日田と新進気鋭の佐伯。それぞれの取り組みを共有
会場は満員御礼。九州エリアはもとより遠くは静岡県から駆けつけた参加者の姿もあり、熱気に包まれていました。

まずは佐伯広域森林組合の今山さんと、日田の林業家・マルマタ林業3代目の合原万貴さんが、佐伯・日田で行われている造林・育林の取り組みについて紹介。元林野庁職員という経歴を持ち、ひた森の勉強会をきっかけに日田へ移住・起業した合同会社フォレストシティの都賢太郎さんが専門用語を解説し、林業家系で育った編集者の鯨本あつこがモデレーターを務めるパネルディスカッション形式で進行しました。

「(講演会の話をもらった時は)日田に呼び出されて、蜂の巣にされるかと思いました(笑)」と語る今山さんは、「伐ったら植える」という林業の基本サイクルを徹底し、「ほぼ100%の再造林率」を達成し、伐採から再造林、5年間の下刈りまでを一括で請け負う独自のビジネスモデルを確立する佐伯広域森林組合の取り組みを紹介。

マルマタ林業の合原万貴さんは、500年の歴史を持つ日田林業の厚みや多様性を紹介。市内の飲食店とコラボした「きこりめし弁当」をプロデュースするなど、林業の魅力を文化的に発信する「ヤブクグリ」の活動や、ひた森の担い手づくり協議会の取り組みなど、伝統を受け継ぎながら、新たな担い手づくりにも尽力している日田林業の概要を伝えました。

今回の講演でも特に興味が向けられたのは、造林・育林を担う人材の収入問題でした。
「林業の林業従事者の年間給料は約360万円。これは全産業平均より約100万円も低い」という現実を都さんが語るなか、成果報酬による「稼げる」仕組みを導入する佐伯では、「やればやっただけ稼げる成果報酬制度が若い従事者のモチベーションと収入向上に直結している」と説明。
頑張り次第で高収入を実現できるモデルにより、たくさんの若い働き手が集まっていることに、参加者もおどろきの表情をみせていました。

また、佐伯広域森林組合の「ほぼ100%の再造林率」という持続可能な森林経営には、森林所有者との契約を「伐採」だけで終わらせず、その後の「再造林」と、苗木の成長に不可欠な「5年間の下刈り」までを一つのパッケージとしているサイクルや、伐採事業者には木を伐るだけでなく、植えやすいように山を整える「事後整地」までを依頼し、次の植林工程がスムーズに進むよう図っていることも共有されました。
「伐採したところは必ず植えます」という今山さんの力強い言葉も印象的で、「伐ったら植える」が個々の事業者の善意に委ねられるのではなく、ビジネスプロセスとして確実に実行される仕組みとなっている佐伯の造林・育林体制に改めておどろかされました。

講演会では他にも、苗木不足の問題や、林業の魅力や重要性が一般社会に十分伝わっていないという情報発信の壁などが語られ、会場参加者からの質疑や感想の共有も活発に行われました。
これらの課題提起は、登壇者だけでなく、会場全体で日本の林業が直面する問題を共有し、共に解決策を考える重要なきっかけとなりました。
講演会後は「きこりめし弁当」をつくる日田の大衆食堂「寶屋」での交流会も開催。講師や日田の林業者、全国各地から集まった参加者が語り合う出会いと学びの詰まった1日となりました。

古きに学ぶこと、新しきに学ぶことは、共に重要。
500年の伝統がある林業地・日田と、革新的な取り組みが光る佐伯は「日田vs佐伯」として見られることもありますが、同じ大分県、同じ九州エリアの森をつくる事業体として、学び合い、高め合っていきましょう!という明るいエールが交わされました。
次回のひた森講演会は2026年1月、2月に開催予定。林業がみえるまち・日田で多様な学びが得られる講演会にぜひご参加ください。